【コラム】不良品ゼロを目指して
コンクリート製品が製品異常となる原因
コンクリート製品が製品異常となる様々な原因は複数あり、以下が複合して引き起ります。
1.生コン不良
2.養生不良
3.締め固め不良
4.材料不良
5.鉄筋かぶり不良
7.仕上げ不良
6.気象条件や外圧による異常
1.生コン不良
1-1.強度不足(硬化不良)
水が多いコンクリートを打設すると必要な強度が得られません。
脱型時にクラックが入ったりします。
現場で施工された後に割れたりした場合は人命に係わることさえあります。
強度不足を防ぐ
- 生コンの状態を見極める。
- 極端に柔らかいコンクリートなど明らかにいつもと違うコンクリートの場合は確認してから打設する。
- 生コンの変化をプラントオペレーターに教えて改善する。
1-2.空気量の不足(凍結融解)
ある程度コンクリートは水を吸収しますが、水が凍ると体積が大きくなります。
凍ったり溶けたりを繰り返すうちにコンクリ-トが壊れてきます。
これを凍結融解といいます。
コンクリートの内部に細かい空気孔を作ることで水の膨張をスポンジのように吸収することができます。
そのようなコンクリートをAEコンクリートといいます。
この空気が少ないと、先ほどの凍結融解を起してしまいます。
空気量の不足した生コンの特徴
- シャビシャビの生コンは空気が抜けてしまう。
ある程度の粘り気が必要。 - 夏の暑い時は空気が入りにくい。
空気量が足らないコンクリートは基本的にガサついている。
プラントで柔らかくするために水を加えると見た目は柔らかいが、水っぽくなる。 - 正常ならコテでなでてみるとプチプチと泡がはぜる。
空気量が不足するとどんなになでても泡が出ない。
※正確には計測するには専用の機械(エアーメーター)を使用しないといけない。
生コンが悪いからできる気泡もある
「水あばた」と呼ばれる、アメーバー状の大きな気泡をが発生する時があります。
水あばたが出る時は生コンが水っぽいです。
この場合は原因もいろいろあり、振動だけでは解決できず、むしろ逆効果になる事もあります。
2.養生不良
2-1.煮えた製品
蒸気養生時に蒸気をかけすぎた場合に起こる。
型枠内部のコンクリートの水分が沸騰し気化することで、内部のコンクリ-トがスポンジのようになってしまう。
仕上げ面もスポンジ状になり、実用強度も期待が出来ない場合が多い。
2-2.温度差クラック
コンクリートは硬いので、一見伸び縮みが無いように見えますが、実は温度によって多少の体積変化が発生します。
養生槽など高い温度のものを急激に冷やすとコンクリートが急速に冷え縮まるため、弱い部分にクラックが入ります。
比較的大きな断面の製品に入りやすい。
また、複雑な形状のものにも良くみられる。
膨張剤という薬剤を使用してあらかじめ縮む分だけ膨張させるなどの方法で防ぐことができますが、一般には使用しません。
ゆっくり冷やすことが基本です。
2-3.DEF(Delayed Ettringite Formation)
製品を蒸気養生し温度が高温(80℃以上)になると脱型後しばらくして製品に薄いクラックが出る現象。
高温で養生した後に湿潤した環境下で起こるとされている。
凍結融解に似た症状となる。
JISでは蒸気養生の最高温度を65℃を上限としています。
いかなる状況でも80℃を超える養生はよくないと思いましょう。
3.締め固め不良
3-1.ジャンカ
振動不足が主な原因であるが、コンクリートが分離して砂利ばかりでモルタル分のないコンクリートを打設した場合にも発生する。
ジャンカを防ぐ
- 材料を分離させないように打設する。
- 鉄筋やインサートなどが複雑に設置された製品はできやすい。
→じっくり打設する。 - 型枠下部のモルタル漏れがないか良く確認する。
大きな漏れはジャンカの原因となる。 - 生コンの投入高さが高い製品の下部に出来やすい。
投入時に材料がバラバラにならないように打設する。
3-2.水ばしり(砂すじ)
振動のかけすぎが主な原因。
生コンの状態にあわせて振動を調整することにより防げる。
※やわらかいコンクリートに長時間振動を与えるとおこる。
4.材料不良
4-1.アルカリ骨材反応
骨材が悪いときにおこる。
骨材の成分にコンクリートのアルカリ分に溶ける成分が含まれる場合、砂利や砂が溶けてゲル状(ドロドロのもの)をつくります。
行き場のないドロドロ分はコンクリートを破壊して外部に出ようとします。
そのために不規則なクラックが無数に発生します。
4-2.塩害
材料の中にたくさんの塩分を含んでいる場合、塩分とセメントの成分が化学反応を起してコンクリートのアルカリ分が失われてしまいます。
すると、コンクリートが次第にぼろぼろになり、壊れてしまいます。
内部に鉄筋がある場合は早く錆付いてしまい、鉄筋が錆びて膨張してコンクリートを破壊します。
5.鉄筋かぶり不良
鉄筋のがぶり厚さが悪いためにコンクリートがおかしくなることはありませんが、構造物として異常をきたします。
鉄はコンクリートのような強アルカリ性の環境下では表面に皮膜を作り、錆びることがありません。
コンクリートは長期間大気にさらされると表面から徐々に劣化し、アルカリ性を失っていまいます。(中性化)
このために表面から浅いところに鉄筋があると早く錆びてしまうことになります。
6.仕上げ不良
仕上げ面(コテ仕上げ)面は製品の使い方によって、施工のしやすさに影響します。
仕上げ面に不良があると以下のような製品不具合となります。
※多くの製品は、仕上げ面が使う時は底面になります。
1.底面がガタガタ→据付しにくい(水平にならない)
2.側面がガタガタ→施工すると、長くなってしまう。(ふた)
3.表面がきたない→施工すると仕上げ面が人目にふれる場合に美観が悪い。
※規格値は別として施工に支障がない程度はせいぜい±2~3mmの誤差と考えたほうがよい。
7.気象条件や外圧による異常
私達の製品は長い期間たっても異常が発生しないように作らなければなりません。
現場や保管場所の様々な気象条件により、製品に異常が出ることがあります。
このような場合にも元をたどると作り方が悪いことがあります。
まとめ
コンクリートに異常が発生する原因は様々です。
「生コンは生き物だ」と良く左官屋さんは言います。
天然の材料を使い、天候に左右されながら作るコンクリートは大変難しいものですが、それゆえに面白いとも言えます。
丸治コンクリート工業所はコンクリートのプロとして、コンクリートの性質を良く理解しコンクリートを使いこなせるようにしています。